まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
085回「いささかに 思ひて来しを 多祜の浦に」
2022年01月27日

ほんのちょっとと
思って来たのだが、
多祜の浦(たこのうら)に
咲いている藤を見たら、
一夜を過ごしてしまいそうだ。
いささかに 思ひて来(こ)しを 多祜(たこ)の浦に 咲ける藤見て 一夜経(ひとよへ)ぬべし
久米広縄(くめのひろなは)(巻19・四二〇一)
天平勝宝二年(七五〇)、四月十二日(太陽暦では五月二十五日)、国守・大伴家持を始めとする役所勤めの人々が布勢の水海(ふせのみずうみ)(氷見市十二町潟[ひみしじゅうにちょうがた]付近)で船遊びをしました。
ちょうど藤の花の美しい時期です。日ごろ仕事に追われる彼らにとって、予想以上に楽しい時間だったようです。
週に一日ならぬ六日に一日の万葉の時代の公休日を利用したレクレーションですが、翌日は、また早朝から仕事です。国庁(高岡市勝興寺付近)に帰るため、一泊するのはあきらめたのでしょうか。今も昔も、役所勤めは忙しいものです。(井ノ口史)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。