まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
093回「鮪突くと 海人の燭せる いざり火の」
2022年03月23日

鮪突き漁(まぐろつきりょう)で
海人(あま)がともしている
漁り火(いさりび)のように、
表にはっきりと出してしまおうか、
わたしの胸のうちを。
鮪突(しびつ)くと 海人(あま)の燭せる いざり火の ほにか出(い)ださむ わが下思(したもひ)を
大伴家持(巻19・四二一八)
天平勝宝二年(七五〇)五月に、家持が漁師がともす漁り火を見て詠んだ歌です。
「鮪突くと海人の燭せるいざり火の」は、「ほ(はっきりすること)」を導くための序詞、簡単に言うと例えで、家持の思いは下の二句にこめられています。夜の闇に明るく輝くたくさんの漁り火を例えに使ったのは、胸に秘めた恋の炎を表現するのにふさわしいと思ったからでしょう。
ところで、家持は、マグロの古い呼び名である「鮪(しび)」を「釣る」でなく「突く」と歌っています。おそらく直接マグロ漁を経験したか、もしくは漁師から漁の仕方を聞いたことがあったのでしょう。(新谷秀夫)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。