まんれきブログ -
越中万葉歌を読む~越中万葉かるたの世界~
096回「この雪の 消残る時に いざ行かな」
2022年04月14日

この雪が
消えてしまわないうちに、
さあ出かけよう。
やぶこうじの
実が雪に照り輝くさまも見よう。
この雪の 消(け)残る時に いざ行(ゆ)かな 山橘(やまたちばな)の 実の照るも見むく
大伴家持(巻19・四二二六)
雪の日に大伴家持が作った歌。山橘は、丈(たけ)の低い小さな常緑樹で、冬に五ミリほどの小さな赤い実をつけるヤブコウジのこと。地面に降り敷いた雪は日中の光に照らされて、つやのある赤い実が、その雪にいっそう照り輝いています。
家持は越中での生活で、白い雪の中に赤い山橘の実を見たことがあって、雪が消えないうちにその光景をまた見たいと思ったのでしょう。「さあ出かけよう。」とまわりの人々にさそいかけています。
山橘は雪が降り積もってしまうと隠れて見えなくなるような小さな木です。まだ雪がそんなには積もっていなかったのでしょう。(垣見修司)
高岡市万葉歴史館編
『越中万葉を楽しむ 越中万葉かるた100首と遊び方』
笠間書院・2014年刊
フルカラーA5判・128頁・定価1000円
※本文の中で引用した歌の読み下し文は、高岡市万葉歴史館編『越中万葉百科』(笠間書院)によります。